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2006年3月31日 (金)

特集「法教育と実務家」

「市民と法」(民事法研究会)№38で、標記特集が組まれました。ぜひ、呼んでみてください。江口勇治筑波大学教授の「法教育とは何か」、柏木信一広島修道大学助教授の「消費者教育と法教育~消費者教育実践に関連して~」他、司法書士、教員による論文、司法書士による法教育への取組事例が掲載されています。詳しくは、法教育仲間の小牧美江司法書士のブログ(http://k-mie.cocolog-nifty.com/)でも紹介されていますので、ご覧ください。

「法教育とは」・・・とひとことでは語ることは難しいかもしれませんが、様々な取組みの中で、「これが法教育か」「これも法教育か」と気づくことがごくごく自然なことかもしれません。教育は論じるよりも実践が大事?かと感じるところです。

様々な場面で、「法教育」が語られ、その姿が多くの市民のみなさんに見ていただけるようにしていきたいと思います。今回の特集は、そんな試みのひとつです。

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2006年3月24日 (金)

様々な現場での法教育

法教育は、司法制度を正しく利用し、適切に参加する力を身につけるため、知識を覚えることにとどまらず、実生活で生きて働いていく力として、思考力、判断力、表現力などを高めることを重視している。(法教育研究会報告書)

私たち司法書士は、日々の業務の中で、このようなことを実践をしていく必要がある。依頼者に紛争解決のために主体的に考える意識をもってもらい、専門家主導ではなく、依頼者個々が解決ためにはどうすればよいか、私たち専門家とともに考えていく。それがこれまで本人訴訟という形で依頼者を支えてきた私たちの職務にとって必要な姿勢ではないだろうか。そのためには、私たち司法書士も法教育の理念を学んでいく必要がある。そしてそれを様々な場面で伝え、実践をしていく必要がある。

法教育実践の場は、「教室」だけではない。

民事・家事調停委員に就任してから7年目となった。これまで多くの先輩調停委員の指導を受けながら何とか執務を行ってきた。そんな中、様々に感じていることがある。調停委員の個性もあろうが、人生とともに経験豊富な調停委員ほど調停委員主導型の調停をしようとする傾向が強いかもしれない。調停当事者よりも少し高い視線で見てしまうのではないだろうか。調停はあくまでも話し合いの場であり、調停委員は相互の主張を平等に聞くことにより始まり、当事者に紛争解決ための当事者意識を抱かせ、その中で互譲させるための努力をしていかなければならない。ここにも法教育の視点が必要なのではないだろうか。主体は誰かを忘れてはならない。また、家事調停の中では、今だに古い感覚、家を中心とした考え方、男女の役割を古来のものを基本とする考え方を基準として「説諭」する調停委員もいる。確かにそれは、ひとつの考え方ではあろうが、今の当事者にそれを押し付けることはできない。無理に成立させた調停は本当の解決ではない。裁判所にとって未処理事件をひとつなくしたことにしか過ぎないのである。当事者の解決エネルギーを高めるために努力することも調停委員の役目かもしれない。

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2006年3月12日 (日)

日司連市民公開シンポジウム

3月10日(土)14時より3時間、四谷の司法書士会館で標記シンポジウムが開催された。テーマは「気軽に相談できるって、ホント!?~法テラスと司法書士の役割~」 中村日司連会長、金平輝子法テラス理事長予定者の挨拶の後、法テラスと司法書士総合相談センターの紹介ビデオが上映された。

その後は、久保潔日司連外部理事をコーディネーターにパネルディスカッションが行われた。パネリストには法務省の大場参事官、法律扶助協会の藤井専務理事、日弁連司法支援センター推進委員の亀井弁護士、全国消費生活相談員協会の下谷内理事長、早稲田大学の和田仁孝教授、愛知会の社会事業部担当副会長の和田司法書士の6人が登壇した。

 昨年、一昨年は「法教育」をテーマにしたシンポジウムで、私も報告者、パネラーとして登壇していたが、今年は聴講者としての参加をさせていただいた。

さて、パネルディスカッションでの各パネラーの発言の中から、興味があった点をいくつか紹介する。 【和田司法書士】かつては制度広報として相談事業が位置づけられていたが、司法書士法の改正により法律相談権が法定され、利用者の法的手続きの支援、法的サービスの提供としての相談事業が行われている。(質的発展)司法書士会が行う法律相談の体系化、一元化を行うことにより、利用者への質の高いサービスの提供ができるようにしていきたい。相談センターからの会員紹介システムが構築されている。 【大場参事官】総合支援法の内容、司法支援センター(法テラス)の制度説明。法テラスでは、情報提供は無料で行う。法律扶助制度を利用しての無料相談、司法過疎地における地方事務所での有料相談の相談事業を行う。 【藤井専務理事】法律扶助について、平成17年度は45億円の国の補助金交付を受けているが、法テラスに事業主体が移行してからは国が扶助事業を行うことになる。(法律扶助事業の質的変換)その中での司法書士の責務として、扶助事件受任・受託者としての役割、司法過疎地における活動、扶助業務への参画(運営、審査等)などを指摘した。 【亀井弁護士】48年の歴史のある法律扶助事業に平成12年から司法書士が「お客さん」として参画してきたが、今後は主体的に関わる必要がある。法律扶助事業に対しては弁護士会が作り、育てたという愛着があるために地域によっては、法テラス事業への司法書士の参画への反発も少なくないと感じる。今後は法テラス運営については弁護士と司法書士が協力していかなければならない。東京地方事務所では司法書士が副所長を担う予定。 【下谷内】司法書士に相談後、消費生活センターへ再度相談を持ち込むケースで、相談を受けた後のことまでを考慮しないものが見受けられる。司法書士は市民に身近な立場にいるのであるから、相談の中での十分な聞き取りをし、その後の具体的な解決までの道筋をつけることも必要なのではないか。 【和田教授】司法は敷居が高いというイメージが強いが、なぜ、敷居が高いのか、その具体的なイメージが不明である。これまで、その敷居にさえ到達できなかった市民がいたのである。情報提供業務の中での振り分けが行われていくが、相談内容の多面性に対応するためには振り分けをしたあとの相談の大切さを感じている。システムを動かすのは「人」であり、そのコアとして法テラスに期待をしたい。

また、「連携」をキーワードにパネラーが意見交換を行った。いくつか発言を拾ってみる。 【和田教授】紛争の多重化傾向を考えると、心理的な不安を誰かがコアとして対応しなければならない。その専門家が最後まで他の専門家との連携を組みながらトータルケアを行うことが必要。たらいまわしの防止。相談者との共感の共有が心理的不安を解消していく。 【下谷地理事長】情報提供者の聞き取り能力の養成が必要なのではないか。 【大場参事官】振り分け先のネットワーク化が必要。法テラスは「迷子」になっている市民を救う機関であり、既存の相談機関はこれまでどおり機能してほしい。法テラスは既存の相談機関を補完する役割を担うのであり、取って代わるものではない。 

そして、和田教授が、大都市では弁護士、司法書士が数的には飽和状態であると言われているが、市民の側の視点で考えると、十分なリーガルサービスを受けることができる体制が構築されているとは思えない。つまりは専門家へのアクセスが十分にできない、社会的過疎が生じている。紛争の問題点がどこにあるのか、市民の創造的コミュニケーション能力が備わっていないのではないかと指摘。また、藤井専務理事や下谷地理事長からは、司法過疎地は狙われている。悪徳業者にとっては、過疎地は聖域・・・誰も援助をせず、かつ、専門家にもたどり着けないから。そして、被害を受けていることにすら気がつかないことを指摘。・・・これらの話を聞いていて、「法教育」の必要性を強く感じたのである。市民が司法に、専門家にアクセスできる「力」、そして専門家とコミュニケーションをとることができる「力」を育むこと、そのためには法教育が必要なのである。 最後に大場参事官が「法教育」の必要性を語ってくれた。

法テラスは、法教育の情報提供の「核」としても機能すべきである。

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2006年3月 5日 (日)

第4回法教育推進協議会

2月22日、標記会議が法務省大会議室において開催された。霞ヶ関にある法務省に通うのは法教育研究会からすでに4年目となった。その間、多くの法教育に関わる方々と出会うことができた。これは、私個人にとっても、また、司法書士界にとっても大きな財産であると思っている。毎回の会議では多くの報告事項とそれに関する意見交換が限られた時間内で行われる。個々の発言時間には限界がある。当日の会議内容は直前に通告され、大量の資料も会議会場の「指定席」に着いて初めて目にするという状態である。私の事務所のある福島県郡山市から霞ヶ関までは2時間余りあれば到着できるという地の利を生かし、できるだけ余裕を持って出かけ、少しでも事前に資料に目を通すようには心がけている。この協議会には、司法書士界の代表という大きな責務をも背負い出席をしているため、常に日司連初等中等教育推進委員のメンバーの心強いバックアップをいただいている。

さて、第4回の会議内容は次のとおりであった。

1千葉大学教育学部における法教育の取り組みについて①小学校中学校における法教育のあり方を考える②小学校でもできる「裁判員制度」体験プログラムの開発③学校教員への法教育研修の拡大のための検討課題・・・①については、小学校社会科における法資料の教材化への取り組み実践が報告された。具体的には、地域社会で防犯に関わる仕事をしている人たちの役割を知ったうえで、自分たちで安全ルールブックを作ることにより自らの防犯意識を高めるとともに地域の一員として意識を高めることを目的としている。 ②については、千葉大学の大学院生がモデル授業を演じている内容であった。具体的事件を取り扱った模擬裁判の様子が報告された。意見交換では用語の使い方や内容が小学生には難しいのではないかという意見があった。これに対し、小学生が理解できなければ国民に裁判員制度は浸透しないのではないかという視点でのプログラム開発であるという説明があったが、私も大学院生が演じるそれぞれの役割を小学生に置き換えると、せりふを棒読みするだけでとても内容の理解までは無理ではないかと感じたのである。裁判員「制度」を教える教育に偏ってしまうのではないかという危惧を感じるといった意見交換がなされた。素直に「なぜ悪いのだろうか」という点を抜き出せるだけでもいいのでないだろうか。③については、いくつかの問題点の抽出と課題設定が行われた。「法教育に対する教員の多様なイメージにどう対応すべきか」→法教育の具体性を的確に伝達する必要性 「法教育の目的を十分に意識化をしておかないと、教員にとって学んでほしいもの、考えてほしいものを学習内容として取り上げ、子どもの視点での取り組みにかける危険性がある」→教員の意識化促進の必要性 「具体的な教育場面で効果的な教育的関与のために、教員が持つべき必要最低限の法知識や議論整理のための指針が不明確」→教員と法律専門家との連携による具体的教育場面の理解推進 その他、法教育を教科に位置づける必要性、教員養成、現職教員のリカレント教育に位置づける必要性の検討が今後の課題として挙げられた。

2中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程の審議経過報告について これについて、文部科学省の担当官より説明があった。18年度内改訂を目指す学習要領の中で法教育について触れられている。また、「学校外の人材や学習機会を有効に活用し、各教科等の関係部分を相互に関連付けながら理解させることが重要」としている点にも注目したい。

3消費者教育体系化の検討状況について これについては、内閣府国民生活局の担当官より説明があった。日々変化する消費者問題への対応の困難さが増しており、対症療法的な教育には限界があり、あらためて問題点を考える力をはぐくむまさに法教育の視点での教育への取り組みが検討されている。さらにはそれらの教育の担い手として司法書士の実績に基づく期待がなされているとの説明があった。

その他、裁判員制度の教材については、制度広報教育教材にならないように配慮しながら進めていくことが確認された。今後、具体的教材例についてはパブコメ募集の機会も持たれる予定である。

会議中、法教育にとって必要とされるコミュニケーショ能力の育成には「国語力」が欠かせないという議論にもなった。

「教育」は与えられるもの、「学習」は自ら学ぶことを求めるものという違いがあるのではないか。法教育も裁判員制度の理解のために教育されるものになったのでは本来的意義は喪失してしまう。幼児期から発達段階に応じて学習する機会を得、その中で法教育の視点が無理なく身につくことによって裁判員制度を支える力のある国民の層ができていくのではないか。時間はかかる。かけなければならない。それが「学ぶ」ということではないだろうか。

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